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第三話 ④

Auteur: 上守葉
last update Date de publication: 2025-12-21 20:00:11

「……怪我人が?」

 軽く顎を引いて頷く神風かみてさんが率いる神風家は、刀持ちたちの医療を全て担っている。

 神風家が帝都のほぼ中央に位置しているというのもあるが、神風さんが強力な治癒術の使い手であるというのも、大きな理由だ。

 本来刀主とうしゅは、灯守とうもりによって力を与えられるか、代々の術式や刀術でもって夜住を倒す。

 神風家は、唯一攻撃的な術式ではなく内側を守る術式を引き継いでいる家柄なのだ。

「こ、こちらです」

「……これは」

「偉いですね、日向子さん。よくこんな資料を持ってらっしゃいました」

「い、いえっ。直紹なおつぐ様がお持ちしろと! 仰ったのでっ」

 神風さんに促されて風呂敷の中に入れていたのであろう紙束を差し出してきた日向子に、沙弥さんが眼鏡を軽く上げて唸る。

 紙束は、そこそこ重そうな分量だ。

 簡単な書付もあるのか色の違う紙も混ざっている紙束は、増えてもいいよ
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  • 灯火の番   第十五話 ③

    「普段僕たちが相手にしているのは夜住でしょ。でもここに落ちてくる人間の数は減るどころか、増えてるんだよね」「それは……誰かが……?」「そー。何かが故意に殺して、もしかしたら夜住にしてるのかもしれないね」 絶句して、神風さんが口元に手を当てる。 しかしその目は死体の幻影から外されることはなく、徐々に広くなっていくように感じる地下室の全てを見つめているようだった。 オロチに関わる死者と、先生は言っただろうか。 つまりここに居る死者たちは──オロチと関わった霧子さんが殺した可能性もあるって、ことなのか? 優しくて頼もしかった霧子さんの姿が、先生の語る霧子さんと重ならない。 先生は「自分に信用がなかった」と言っていたが、神風の封庫であの霧子さんを見ていなかったら、俺も先生の言葉を真っ直ぐに受け止められたかどうか。 最年長の刀主として俺達を見守ってくれていた霧子さんを、疑えた、だろうか。「……ま、信じなくてもそこはしょうがないよ。いきなり言われてびっくりしてるだろうし」「……え」「もうちょっと行った所に神守の封庫があるから、そっちも見よっか。入るのは面倒だけど、君たちなら大丈夫だと思うよ」「せ、んせい」「……どっちを信じても、僕は君たちの意見を尊重するよ」 まるで心を読んだような先生の言葉に、俺は咄嗟に言葉が出てこなかった。 しくじった、と思っても、もう遅い。 違うんだと、貴方を疑ったわけじゃないと言いたくても、言葉が出てこなければ無意味だった。 せめて俺は、俺だけは、先生の言葉を即座に受け入れなければいけなかったのだ。 先生は、慰めて欲しいなんて決して思っていないだろう。 けれど、でも、霧子さんのことで衝撃を受けたのは間違いなく先生も同じだったはず。 先生は、斬られた当事者だ。 その事実を周囲に聞き入れてもらえなかった

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  • 灯火の番   第十五話 裏切り、謎めき

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  • 灯火の番   第十四話 ②

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  • 灯火の番   第十二話 過去、岐路、疑問

    「本当はもうちょっと様子見をしようと思ってたんだけど、昨日の爆発事件といい、擬態する夜住といい、ちょっとおかしいでしょ。火種に守られてる刀主が乗っ取られるなんて、普通はありえない」「それが、八岐之大蛇に関係あるって?」「まー元々残り時間は短いと思ってたし、いつかは行かなきゃいけない場所だしね。懸念事項を1つでも消していくのは、今のソウちゃんにも悪くないんじゃないかなって」「……残り時間?」 黙って話を聞いていたけれど、聞き捨てならない言葉につい、声が漏れる。 先生に色々と聞いていたハルも、ぎゅっと

  • 灯火の番   第十一話 ④

    「……は?」 ニコニコと笑いながら驚くべきことを言い放った先生に、俺は先生に触れていた手をピタリと止めた。 日向子とハルも目を見張っていて、どちらも口をぱくりと開けたまま、何も言えないでいる。 僕の実家。 実家、とは、自分の生まれた家を意味する言葉だ。 俺なら、帝都から電車で十銭ばかり離れた山に近い町の、薬屋。  すー、と息を吸い込んで、長く長く、時間をかけて吐き出す。 落ち着け、と、小声で言うと、声が届く範囲に居た先生がケラケラと笑った。 笑い事じ

  • 灯火の番   第十一話 ③

     今度はちゃんと、視線で俺の顔を見ている。「なぁに、どうしたの」 「饅頭でも食べましたか。口元が汚れてます」 「うっそ。気付かなかった」 「急いで口に詰め込みすぎたのでは?」 「美味しかったよ」 「いや、そうじゃなくて」 そのまま、刻印から指を滑らせて唇から少し離れた、頬に近い位置にくっついている茶色い饅頭の皮をとってやる。  濃い茶色の薄皮は、先生の真っ白な肌の上ではやけに目立っていて。  甘い物好きな先生が饅頭を食べるのには違和感を持たないが、頬についていたカスに気付かないのはやはり

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